2024.10.16

「培養肉」でこれからの動物たちを救いたい


【第13回】

株式会社オルガノイドファーム 
種田友香さんTaneda Yuka

食糧問題解決で注目されている「培養肉」の研究開発の現場でお話を伺いました。

現在の仕事を選んだきっかけを教えてください。

もともと動物が大好きで、動物に関わる仕事をしたいという思いがありました。大学時代は動物の栄養についての研究を進め、その後、培地メーカーに就職し、再生医療に関する製造業務を行っていました。
今の仕事を選んだ大きなきっかけは、これまで培ってきた技術を使って培養肉を確立することで、消費されていく動物たちの命を少しでも減らすことに貢献できると感じたからです。動物の命を守り、持続可能な未来を作り出すための一歩として、この道に進む決意をしました。

仕事の内容を教えてください。

株式会社オルガノイドファームは、世界人口の増加による食肉需要の高まりに伴う畜産による環境負荷、そしてアニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、新しいタンパク質の生産方法として「培養肉」の確立を目指しています。私が業務として取り組んでいるのは、培養肉の原料となる動物細胞を大量に生産するための技術開発です。動物細胞を効率よく増やすための培地成分や細胞培養の条件を検討し、その最適化のため、日々、動物細胞と培地が入ったバイオリアクターと向き合いながら、試行錯誤を繰り返しています。培養肉は現時点ではまだ実用化には至っていませんが、このような基礎技術の確立が実現に向けた重要な一端を担っています。

仕事の魅力について教えてください。

現在、限られた国でしか認可されていない「培養肉」という新しい食の分野に挑戦できることが、この仕事の大きな魅力だと感じています。まだ誰も足を踏み入れていない未知の領域に取り組んでいるため、研究ではトライ&エラーを重ねていますが、苦労して導き出した条件で細胞がたくさん増えたときには、大きな達成感を感じています。この瞬間が、私にとっての研究へのモチベーションとなっています。そして、私自身が完成した培養肉を食べるのをとても楽しみにしています。

学生時代の学びは役立っていますか?

現在の研究内容や実験の手技は学生時代に学んだものが直接的に役立っている訳ではなく、当時は自分が将来、培養肉の研究を行うとは想像もしていませんでした。しかし、学生時代に畜産の現状について学んだ知識や経験は、今の仕事において非常に役立っていると感じています。
また、前職で培った細胞を扱う技術は現在の研究に大いに貢献しており、今までの経験がしっかり基礎として私を支えてくれています。

最後に高校生へのメッセージをお願いします。

以前、塾講師をしていたときに生徒から『将来、何がやりたいか分からない』という相談をよく受けていて、どう答えようかずっと考えていました。
私は動物が好きだったので、動物について学べる大学を選び、今の仕事へ辿り着きました。もし少しでも興味がある分野があれば、ぜひその気持ちを大切にして、失敗を恐れずに挑戦してほしいです。どんな経験も無駄にならず、未来につながる可能性があるからです。

種田友香(たねだ・ゆうか)

株式会社オルガノイドファーム 研究員
臨床培養士 食品衛生管理者
日本獣医生命科学大学大学院獣医生命科学研究科卒業
2020年に培地メーカーに就職。再生医療に関わる仕事を経験し、細胞を扱う分野に興味を持つ。同時に在職中、大学院に進学し動物栄養生化学について学ぶ。
2024年に株式会社オルガノイドファームに転職し、培養肉生産のためのスケールアップに関する検討に取り組んでいる
趣味は音楽鑑賞。休日にはお気に入りのバンドのライブに行くことも。
(本人の希望により仮名で掲載いたしました)

(取材実施:2024年9月)

株式会社オルガノイドファーム

国内 EPC 事業会社である日揮が、培養肉の社会実装を目指した技術開発を行う新会社として設立。培養肉の原料となる動物細胞の大量生産システムを確立するために、スケールアップに適した細胞および培養プロセスの開発に取り組む。グループ会社の医薬品分野を通じて培ってきた細胞培養関連技術や大規模生産を可能とする工程の自動化などのエンジニアリング技術を掛け合わせることで、培養肉生産工場の早期実現を目指す。

株式会社オルガノイドファーム

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