2024.09.17

ハマヤクサイエンス研究会第3回学術発表会開催
発表レポート【化学系】

化学系の発表は11題。

研究タイトル「油脂の分子量① ~けん化価の測定方法について~」

横浜清風高等学校
府川優李さん、山口 眞央さん

本発表では食用油における油脂のけん化価について、日本薬局方を参考に横浜薬科大学にて測定を行いました。今回はフラスコと冷却管ではなく、ビーカーと時計皿を用いて実験を行い、日本農林規格(JAS)の範囲内で滴定誤差も少ない結果を得ることが出来ました。エタノールへの溶解度が高い水酸化カリウムを使用することで、油脂と塩酸の反応が観察できました。また、滴定の終点付近でのフェノールフタレインの発色を観察することにより、滴定時に反応時間を考えて操作する必要性が理解できました。

PA-01

研究タイトル「発光物質を用いて光る花を作る」

東洋女子高等学校
半瀬遥香さん、山口紗穂さん

発表者は、人々のやすらぎとなるストレスを軽減する光る花の作成を目指し、化学発光と生物発光の2つの方法で実験を行いました。蛍光色素を吸収させた植物では、茎が発光し、花弁の発光は確認できませんでした。蓄光パウダーを使用した花は一時的に発光しましたが、材料のワセリンの重さで花が枯れてしまいました。ヤリイカ由来の発光バクテリアを使用した実験では発光が見られませんでした。今後は、ルシフェラーゼとルシフェリンを使用した方法で検討を行い、発光を確認する予定です。

PA-02

研究タイトル「二成分混合有機溶媒の密度測定」

国士舘高等学校 科学研究会
冨岡紗衣さん、近藤真志さん

本研究は数種の無極性有機溶媒の二成分混合系の密度を測定し、過剰体積(Vexcess)を計算・比較することにより液体構造に関する知見を得ることを目的とし、実験を行いました。ベンゼン,シクロヘキサン,n-ヘキサン,n-ヘプタン,p-キシレン,四塩化炭素を試料に実験を行い、ベンゼンを含む系ではVexcessは全て正にシフトし、四塩化炭素を含む系では、ほぼ加成性が成り立つ結果となりました。また、n-ヘキサンを含む系では、組成によってVexcessが正負にシフトしました。

PA-03

研究タイトル「手作りミネラルファンデーションの紫外線強度測定」最優秀賞

神奈川大学附属中・高等学校
幸田茉花さん、田畑美桜さん、田中楓さん、山田結々さん、乾辺怜那さん、竹渕和仁さん、小野友紀奈さん、 鈴木莉利花さん、 松永悠加さん、 戸床優希さん、 名雲茜さん、 下脇絢人さん、島津響さん、富岡万裕さん、田中利奈さん

本研究では、ミネラルファンデーションを製作し、その紫外線(UV)遮蔽効果と耐水性を確認しました。酸化チタンや酸化亜鉛を配合して製作したミネラルファンデーションをフィルムに塗布したサンプルを屋外にて紫外線強度計で計測したところ、約73.4%のUV遮蔽率を示しました。耐水性も確認されましたが、水に浸すと遮蔽率は57.6%に低下しました。今後、UV遮蔽効果のある酸化チタンや酸化亜鉛の配合量を増減させて、紫外線遮蔽効果や耐水性がどのように変化するかをさらに検討していく予定です。

最優秀賞おめでとうございます
初めての研究発表会への参加で、とても緊張したとのことでしたが、そんな風には全く見えない堂々とした素晴らしい発表でした!審査員の先生方や他の参加者との交流から、自分たちでは持てない視点からの意見を得ることができて、とても勉強になったそうです。今後どのようなミネラルファンデーションが製作されるか楽しみです。(編集部より)

PA-04

研究タイトル「油脂の分子量② ~ごま油の分子量について~」

横浜清風高等学校
柴田真緒さん、寺島結菜さん

発表者らは学校行事の宿坊体験を通じてごま豆腐に関心をもったことをきっかけとして、数種のごま油のけん化価を調べる実験を行い、それぞれの分子量を求めました。日本薬局方油脂試験法けん化価に準じた方法で実験を行い、油の色の違いによる分子量の違いを確認しました。この差は、含まれる脂肪酸の比率によるものと考えられます。今後は、産地を1つに絞ったごまを用いた実験や、搾油方法の違いによる影響をさらに調査する予定です。

PB-01

研究タイトル「油脂の分子量③ ~MCTオイルの分子量について~」

横浜清風高等学校
城戸杏那さん、笹原悠衣さん、橋本知佳さん

MCTオイルの主成分である中鎖脂肪酸は、、長鎖脂肪酸を含む食用油に比べて体内での吸収・分解が速いとされています。MCT100%オイルとMCT配合オイル(なたね油主体、MCT約11%配合)のけん化価を測定し、分子量を比較しました。その結果、MCT100%オイルは一般的な食用油の分子量の約半分程度であることがわかりました。MCTオイルが体に良いとはいえ摂取量が増えると熱量も増加するため、使用量に注意が必要である。今後はMCTオイルを効果的に使った調理法を考案する予定です。

PB-02

研究タイトル「ケミカルガーデン」

神奈川総合産業高等学校
佐藤大雅さん

発表者らは先行研究が少なく育成が不安定であるケミカルガーデンの育成条件を確立するために、ケイ酸ナトリウム水溶液に金属塩を加え、温度や濃度を変えて検証を行いました。結果として、濃度を上げることで成長が速くなることがわかり、硝酸マンガン(Ⅱ)は幹の数も増えました。塩化コバルトと硫酸鉄は温度を変えることで成長の変化が見られました。また、水流が金属樹の成長に大きな影響を与え、色は金属塩の色に依存することが示唆されました。

PB-03

研究タイトル「過マンガン酸滴定における呈色反応」

神奈川総合産業高等学校
鍋島秋桜さん

酸化還元滴定中の色変化が気になり、色の変化がどのような条件で見られるかを研究しました。まず、シュウ酸溶液と硫酸を混合し、過マンガン酸カリウム水溶液を加えた際の色変化を17℃で観察しました。その後、滴下量、温度条件を変えて反応を比較しました。結果として、滴下量が多いほど呈色が長時間観察でき、温度が低いほど色変化がはっきり見えることが分かりました。過酸化水素を使用した実験では色変化が見られず、過酸化水素の大きさが反応に関係した可能性が示唆されます。

PB-04

研究タイトル「化学発光の発光照度による食物の鮮度評価」

東洋女子高等学校
池田心愛さん、本橋知紗さん

本研究では、酵素カタラーゼが触媒するルミノール反応を用いて食物の鮮度を判定し、食品ロス削減に寄与することを目指しました。ルミノール溶液を調製し、まいたけ、エリンギ、さば、サーモン、酢漬け野菜で発光照度と発光時間を測定しました。まいたけは冷蔵保存で発光が減少し、エリンギは常温保存で発光が増加しました。さば、サーモンは日数経過で発光が減少し、酢漬け野菜では発光が確認できませんでした。まいたけの発光安定性は酵素の影響、さばの発光減少は鮮度の変化、野菜の発光不良は酸性条件の影響だと考えられます。

PB-05

研究タイトル「フルオレセインの合成と蛍光スペクトル測定」

国士舘高等学校 科学研究会
兼子彩菜さん、後田龍彦さん、髙橋紗也さん

フルオレセインは蛍光を発する有機色素で、日常生活や医学分野で利用されています。本研究では、無水フタル酸とレゾルシノールをゼオライト触媒下で反応させ、フルオレセインを合成しました。得られた色素を緩衝液に溶かし、pHを調整しながら蛍光スペクトルを測定しました。再結晶後の粉末は暗赤褐色で収率54.6%でした。最大蛍光波長は519nmで文献値と一致し、蛍光強度はpHに依存し、塩基性(pH8~10)で強く、酸性(pH6~7)で弱くなりました。この結果は、塩基型の構造が高い発光能を持つことを示しています。

PB-06

研究タイトル「コルクで土が蘇る!!~廃コルクを用いた土壌改良剤の実用性~」

山脇学園高等学校
小倉ゆいさん

コルクは年間1000トン以上が廃棄されていますが、スベリンやセルロース、タンニンが含まれており、土壌改良剤としての利用が考えられています。本研究では、コルクが土壌改良剤として効果的かを検証し、家庭での利用可能性と長期的も影響も調査しました。保水性、環境への優しさ、植物の成長促進効果、pHの安定化の4点から評価し、コルクの粉末を土壌に加えた結果、pHが0.33から0.34低下へしました。コルク由来の酸性成分が影響したと考えられますが、さらなる検証が必要です。

PJ-04

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